軽費・ケアハウス全国セミナー

2010.6.10

【日 時】  平成22年6月3日(木)・4日(金)

平成22年6月3日・4日全国老人福祉協議会主催の「軽費・ケアハウス全国セミナー」に参加しました。1日目はワーキングチームの現状報告と4件の事例発表、2日目は行政報告と身元引受人についての講演というプログラムでした。

その中から、今回は、全国老施協ワーキングチーム副会長、内田雅士氏の報告「軽費復権!軽費・ケアハウスの現状と課題」を載せ、今後の研修会での討議内容にしていきたいと思います。それぞれの立場で、今後の養護・軽費老人ホームを考えてみてください。

【軽費復権! 増加する低所得高齢者の安心と安全を誰が守るのか?】
直近の国の調査によると、年収100万円未満の高齢者世帯は、15.3%(138万世帯)、50万円未満は4.0%(36万世帯)でこれから更に増加する見通しの中、低所得者の安心と安全が確保できしかも地域と連携し発展してきた「軽費・ケアハウス」に今、熱いスポットが注がれている。

特に低所得者を対象とした、軽費A型の多様な機能を考えるとき、先の「将来像研究報告会」の『軽費AB老朽化→ケアハウス建て替え』で良いのか?再考の余地がある。またケアハウスにおける高齢者福祉(生きがい)機能や介護機能を備えた「特定ケアハウス」は、特に注目度の高い施設になっている。

――貧困がクローズアップされた今、「AはAのまま」でいられないのか?
――A型としての事業継続を可能とし、実情に合わせ変化・改革していくのが福祉の原点ではないのか?

【現状と課題】
○共通
1.利用者の高齢化・重度化に対する対応 ―― 施設整備・医療連携・職員意識
2.人員配置(看護師・宿直・夜勤者)―― 常勤換算・加算
3.身元保証人 ―― 高齢化・身寄りない・家族の意識
4.施設の老朽化 ―― 建て替え補助金・スプリンクラー設置補助金

○軽費A
1.一般財源化後の設備状況(減少の理由・転換先・資金確保など)
2.基準省令制定後の状況(経過的軽費老人ホーム)
3.具体的な利用像(低所得者層・セーフティネット)
4.住宅機能+生活支援機能
5.介護予防(地域連携・生きがい活動)

○軽費B
1.老朽化と耐震問題
2.利用料(大多数が150万円未満・年間最低90万円は必要)
3.利用者の重度化(住まいだけの提供は限界)
4.利用者の意識「共助」

○ケアハウス(一般型)
1.利用者の高齢・虚弱化(介護度1~3の受け皿?)
2.「特定」を取りたくても取れない(圏域の介護保険料枠がいっぱい)
3.人員配置(現人員では健常高齢者の生活支援で手一杯)

○ケアハウス(混合型特定施設)
1.健常利用者と特定利用者の意識的相違(トラブル)
2.介護職員配置は同じ→介護報酬(他に比べ低すぎ)
3.特定指定→優先権を
4.家賃設定→弾力化 ――― 入居率100%での設定は難しいところもある
5.事務費→安定性のある基準額の設定 ――― 国の技術的助言に対し
地方は下げていないか?

○ケアハウス(全特定)
1.介護職員の医療行為について ―― 特養の医療行為特定にも認める
個室特養のさきがけ
2.特定施設の総量規制につい ――― 特養待機者の受入との位置づけ

○都市型軽費老人ホーム(2010年4月~ )
1.低所得者の住まい
2.利用者の契約が円滑に行える方策
3.夜間の見守り(現人員配置では無理)
4.大都市内で解決する方策  ――― 東京・大阪・名古屋とその周辺

【生活支援施設としての展望】
1.介護施設を利用するまでにはいたっていないが、一人暮らしは困難である
高齢者の受け皿機能の再確認
2.地域の高齢者福祉拠点としての役割強化
3.安定的経営 ――― 民改費の必要性
4.雇用の確保
5.専門家による、利用者支援

【まとめ】
生活支援から要介護者に至るまで、幅広い層の高齢者ニーズに応えるべく、契約施設の特性と柔軟性を生かし、「経済的弱者」「社会的弱者」である高齢者が、安心して暮らせる公の住まい(セフティネット)として軽費老人ホームの地位の確立(復権)と、経営基盤の整備が重要である。

グリーンライフ光陽
施設長 浜田美奈子