新人だったころ

2012.4.27

特別養護老人ホーム神愛園(現・神愛園手稲)の介護職員として働くことになったのは、私が30歳の時でした。高齢者や介護に関する知識や経験は全くなく、仕事の内容もほとんど知りませんでした。介護福祉士の資格制度の始まる3年前のことです。

ベテランの介護職員に交じって自分より若い職員が、笑顔でご利用者と会話し、てきぱきと働く姿に感心させられつつ、毎日、食事介助や排泄交換、入浴介助や夜勤業務など何もかもが初めての経験で、覚えることに一生懸命でした。

仕事にも少し慣れてきたころ、昨日までお元気だったご利用者が急逝されました。初めての出来事に悲しみをこらえながら仕事をしていましたが、ある女性ご利用者の部屋に行ったときのことです。物忘れがかなり進んでおられる方でしたが、私の顔を見ると「よしよし」と優しく私の手を撫ぜ、肩を抱きしめてくれました。その時の部屋の様子やご利用者の優しい眼差し、声が今もはっきりと思い出されます。

今でもその頃の施設の様子を思い浮かべると、お一人お一人のご利用者の笑顔や思い出が次々と浮かんできます。私にとって、新人時代のご利用者からいただいた目に見えない大切なものが、つらいことがあったときの支えになり、今日まで高齢者福祉の仕事を続けてこられた原点になっているのです。

写真は琴寿園のクリスマスと、作品展示会の様子です。


施設長 谷本 靖子

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