線香花火

2013.9.11

「線香花火」は、江戸時代の中頃、藁の先に火薬を付け香炉や火鉢に立てた姿が線香の姿にそっくりなので、いつしか「線香花火」と呼ばれたという。その後、今のように下に向けた形を発明し定着させたのが、歌舞伎や落語にもその屋号が呼ばれると花火大会を連想させる「鍵屋」と「玉屋」だと言われている。また、近世に入り俳人の正岡子規は、「線香花火」のことを「こより花火」と詠った。
今では、過ぎ去る夏の夜の家族で楽しむ花火の定番になっている。

確か、中学生の頃、理科の実験で、線香花火を作ることになった。危険なので、薬品の調合は先生が担当し、その火薬を和紙に包み、まさに、こよりのように先端を寄る作業を生徒が行なった。しかし、何十本やっても成功せず結局50数本中、あの線香花火の様ようになったのは2〜3本であった。先生は「線香花火がどうして、このような現象を起こすのか、科学的に解明されていない。こよりの力加減、火
薬の量も0.01gの匙加減だ。まさに神秘に満ちた花火なのだ」と教えてくれた。

ケアハウスうららかでは、毎年の恒例行事として盂蘭盆の次の日、16日の夕食後にミニ花火大会を行っている。薄暮の中、大半の入居者が童心に帰ったかのように参加してくれている。おもちゃ用ではあるが、打ち上げ花火、火花の噴射の様な花火それぞれに、歓声が上がる。最後の楽しみが、全員による手持ちでの花火。とりわけ、その花火の中でも「線香花火」が人気で、例年、300本以上は用意しているが、数組の輪の中で、あっけなく火の種は消えていく。輪の中の話題も、自身の子供時代、新婚時代肩を寄せ合って火を付けたこと、初めて見せた孫に泣き出された話など、「線香花火」の炎が昔をよみがえさせたのであろうか。自身も中学生の頃を思い出した。やはり「線香花火」は神秘に満ちた花火なのかもしれない。


施設長 中井 雅晴
線香花火

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