旧作の中にみる高齢者の姿

2015.2.6

初めてお便りします。あまり業務とは関係のない話題を書かせてもらいます。
映画界で最も権威があるとされる英国映画協会が発行する「サイト&サウンド」誌では、10年に一度、映画関係者の投票により「映画史上最高のベストテン」を選出している。このうち、直近(2012年)の選出で「映画監督が選ぶベストテン」部門において、欧米の名作を押しのけて1位となった映画は小津安二郎監督の「東京物語」である。寅さんや釣りバカシリーズでおなじみの山田洋次監督が、この名作のオマージュとして、舞台を現代に置き換えて「東京家族」を発表したことは記憶に新しい。

「東京物語」は昭和28年に封切られており、子供たちを訪ねて上京した老夫婦の姿を通して、家族という共同体が歳月の経過ともにバラバラになるさまを生と死を織り込みながら淡々と描いた作品である。当時とは格段に進歩した映像・音声、スピーディで劇的な場面展開が多い作品を見慣れた現代人の目には、この単調なモノクロ映画はすべてが古めかしく見え、違和感すら覚えるかもしれない。

にもかかわらず、時代、民族、国境を越えて多くの映画関係者に愛され、賞賛される理由は何か?それは古典的とも解釈できる人間や家族関係の普遍性が丹念に描かれ、共感されていることに他ならない。

生活様式、価値観が大きく変化して多様化した現代においても、老いた親と子の関係、老いた親(老人)が置かれる立場には基本的な違いはないようだ。半世紀以上も前の映画から、現在につながる高齢者を取り巻く諸問題が透けて見えるような気がする。物質面だけではなく、精神面でも豊かな老後を送られるようにお手伝いすることが我々の使命ではあるが、立派な制度を前に歯がゆい思いをしている方も多いのではないでしょうか。


「ゆき灯りのまち」 (玄関前 メインアイスキャンドル)


(歩道側アイスキャンドル)


施設長 松見 達哉

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