新しい施設理念
昨年、ケアハウス藤花の施設理念をスタッフと一緒に検討いたしました。新しい施設理
念は「ここに来てよかった」を創りたい-安心と豊かさのある生活を支援します-です。新しく理念をつくるというよりも、この一年で取り組んできたことをベースに、実践を理念に置き換えて言葉にしたという感じです。
ケアハウスのケアはメンタリティのかかわり方が非常に重要であり、そのスキルがないスタッフでは十分に対応できません。つまり、スタッフには入居者を一人ひとり把握できるようなかかわり方や取り組み、何よりコミュニケーション・スキルが求められるのです。
入居者や家族の立場から考えると、名前に「ケア」とついているのだから、体が思うように動かなくなったら、「特別養護老人ホーム」並みとは言わないまでも、軽微な「ケア」であれば提供してくれるだろうという、淡い期待を抱いて入居する人が少なくありません。実際には、「ケア」を提供できるような介護職員の配置・体制にはなっていないのですから、入居者から要求されても現場では困ってしまうわけです。特に夜間は、スタッフがおりませんのでまったく対応ができないのです。
藤花の介護業務の目的と役割は「介助」にはありません。入居者の困りごとに対して相談支援を行いながら、介護保険や社会資源と結びつけることにあると思います。つまり、ケアハウス内部のソーシャルワーク機能を相談員だけでなく、ケアスタッフも担うということになります。
もう一つ、取り組んできたこととして、地域との相互関係があります。一般に、生活は建物の中だけでは完結しません。それは施設だろうが自宅だろうが同じことではないでしょうか。建物の周囲の地域環境や、そこで暮らす人々と影響し合いながら、毎日という時間を繰り返すのです。施設で暮らす現実は、施設に入居することによって地域との関係を断ち切られてしまうことにあります。特別な場所で暮らす、特別な人たちではなく、自分たちとなんら変わらない、ごくごく普通の人たちであるということを理解していただくための取り組みが必要であると考えてきました。
施設が得体のしれない、何をやっているかわからない場所と思われないためには、私たちからの情報の発信は欠かせないのです。
「認知症」「成年後見制度」「薬の知識」「介護保険」「口腔ケア」など、高齢になって暮らすための知識や情報を入居者だけでなく、地域の方にも提供する機会をつくってきました。
また、藤花では一カ月に1回、隣にある公園を掃除に行きます。地域における貢献活動です。入居者と一緒に行う環境整備は、入居者自身が環境を創る当事者になるということです。例えば自分の家の庭を自分できれいにすることは、至極当たり前のことだと思います。施設が自分の住居と認識されれば、職員だけが行うのではなく、自分たちが環境整備を担う主体者と考えることができるのではないでしょうか。それがあるからこそ、施設に愛着も生まれるし、生活の責任も生まれるものと考えます。地域もまた同様です。
アンパンマンは「何のために生まれて 何のために生きるのか 答えられないなんて そんなのはいやだ」とテーマソングの中で歌っています。入居者のみなさんらしい生活を手伝っていける支援のあり方を今後も考えていきたいと思います。