絶景と危機管理と共存

2016.11.16

9月初旬に、南暑寒別岳に登ってきました。登山口から雨竜沼湿原まで2時間、湿原を抜けるのに40分、そこから南暑寒別岳まで1時間30分との長丁場で、前回湿原に訪れた時に登ってみたいな〜との思いから、嫁さんが日曜日仕事だと聞き“やったー行ける!!”(と、心の中で)朝5時頃鼻歌交じりに出発しました。

登山口に着くと、午前中雨予報でもあり駐車場には車が一台しか止まっておらず、雨がチョット降ったり止んだりの中景色を楽しみながらの登山です。
湿原に近づくと、インターネットで見ていた熊のフンとか根を掘って食べた後が道沿いに見られ、周りをキョロキョロしながら歩みを進めました。初秋の枯れかけた色合いの静かな景色の中を鼻歌交じりに歩いていると“ギョッ”、円形の沼の縁にも熊の掘った跡が有り「ここにも熊の食べる物があるのか〜、食べるのに忙しくて熊は景色なんて楽しむなんて無いよな〜」なんて事を呟きながら進みます。

湿原を抜け南暑寒別岳への登り道に入り、割と緩やかな道で脇の笹も刈られて歩きやすく・・と思っていたら、そこここに熊が掘り起こして食べたと思われる跡がずっと続くではありませんか。「ここは熊のレストラン街道じゃないかっ!」笹が刈られ根を掘るのに持って来いの場所なんだとビビリつつも着けていた鈴の“カラン”“コロン”の音の有り難さに感謝し、「備えあれば憂いなし」の言葉に危機管理について色々と考えながらまた、景色も楽しみながら、熊の気持ちも考えながらと頂上に到着。先日のテレビで、湿原の熊を定点カメラで観察し熊も人を避けて夕方活動しているようだとのニュースをやっていましたが、熊も人を獲物だと思っていたら悲惨なニュースが流れるでしょうからね。

先に登っていた方が暑寒別岳からの帰りだと一緒に話をしながら昼御飯を摂りゆっくりとした後下山です。
湿原に下りると誰もいない様で、「やったー!湿原を独り占めッ」と鼻歌交じりに歩いていると遠く笹の境目に黒い点が・・。目を凝らし“動いていないよな”と歩みを進めると“えっ二つに増えたッ”、2対1じゃ敵わないよと歩みも早め鼻歌も大きくしさわやかな湿原を抜ける事が出来“思い違いだったんだな〜”との安堵と自分の気の弱さを感じつつ、あくまでこちらが熊の生活圏にお邪魔しており何かあったら熊が悪者扱いされてしまう事(知床も然り)、入居者との関わり方にも繋げて考えながら次は暑寒別岳にも登ってみたいなとの思いを残し、楽しくもスリリングな登山を終えました。


施設長 戸羽 泰徳